カテゴリー「国際」の27件の記事

2013/03/09

おどろきの中国⑥

39 鼎談形式の「おどろきの中国」を読んできて、私が印象に残ったフレーズ、すなわち、私が納得するところの中国像に関する発言のところをピックアップしてきた。
 その中で、考えさせられたのは、日本も含めての世界の「国民国家」ということである。
 一人一人の人間が、国家というものを意識し、国家と個人が結びつき、国民というものを形成する。この国民国家というものは、大昔からあったわけではない。「近代」からと言っていい。
 日本は明治以降ということになる。そして、中国と言えば、第二次世界大戦後になってということになるのではないか。
 しかし、国民のあり方、国家のあり方は、国によってかなり異なるのであって、西欧の枠組みだけでは測れない。中国はまさに新しい形の国を作っているということになる。
 ただし、どの国にもナショナリズムという問題がある。
 そして、ナショナリズムがいい方向に作用すればいいのだが、国家間の対立や戦争に結び付く心配はある。

 私が中国を訪問した1980年の頃は、日本では中国に「親しみを感じる」と答えた人が約8割いた。それが現在では「親しみを感じない」と答えた人が8割で、ちょうど逆転している。この変化、この現実を踏まえなくてはならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/03/08

おどろきの中国⑤

37 第4部のテーマは「中国のいま・日本のこれから」である。
*鄧小平は毛沢東よりは小さいけれど、ミニ天子みたいな存在だったのではないか。鄧小平は、客家(中国のユダヤ人と言われている)の出身で、フランスに留学しており、精強な軍人として、赫々たる革命の功労者である。
*アメリカの支持と承認があって「改革開放」は成り立った。中国の安全を保障したこと、共産党の支配が続いてもいいと容認したこと、資本と技術を提供したうえアメリカの市場を開いたことなどである。
*中国人が、個人主義的で合理主義的でプラグマティックなところは、アメリカ人とよく似ている。
*中国の今の体制は確かに高度成長を前提にしている。これが安定成長やゼロ成長になれば、次の段階に向けた構造調整をしないと、乗り切れない。
*アメリカ一国と中国一国を比べると、中国の方が上回るが、「全キリスト教文明圏」と「中国」で比べるほうが、国際社会の力学をストレートに反映する。
*まず米中関係があって、日本はその付属物である。
*アメリカの専門家は、平和的な中国・台湾統合なら、アメリカは容認するしかないと見ている。
*北朝鮮問題で、アメリカが重視しているのは、拉致問題でなく、核拡散防止の問題である。
*北朝鮮問題のカギを握るのは、軍事行動のオプションがないのであれば、中国である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/03/07

おどろきの中国④

38 (写真は宮台真司さん)
 第3部のテーマは「日中の歴史問題をどう考えるか」である。
*伝統中国は日本をどう見ていたか。日本と中国では、中国が上なのが当たり前。そのつぎが朝鮮で、そのつぎが日本である。
*中国は過去に、軍事力が強いから日本に攻め込んでもいいと考えたことはない。
*日本側の当事者でさえも、自分が何のために中国と戦争しているのか、十全には理解していなかった。そこに問題の源泉がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/03/06

おどろきの中国③

Imagescacyfrfk (写真は大澤真幸さん)
 第2部のテーマは、「近代中国と毛沢東の謎」である。
*中国の社会構造は、上は政治秩序、下は家族秩序による。
*儒教は民族的ではない。多文化多民族な集団を、共通のフォーマットに従わせるための普遍的な原理原則である。ナショナル・アイデンティティをむしろ無化する作用がある。
*中国人に国民意識を注入しなくてはならないという使命感は、孫文にはあった。
*中国にとって、マルクス主義はいわば、天の代替物である。
*マルクス主義を下敷きに、中国流の革命を進めるのが「毛沢東思想」である。普遍主義と中国の独自性とが混ざった毛沢東思想に導かれ、中国共産党が革命を進めるというかたちで、中国のナショナリズムが完成した。政治の主導によって、「中国の革命」が課題として設定され、それを担う主体として、「中国人民」が生み出された。
*政府の組織と党の組織は一致していない。政府が世俗の組織だとすると、党はそれを超えた、教会みたいなレベルにある。
*軍における「政治委員/司令官」という二重性と、一般の組織の「書記/長」の二重性が対応している。(前者の党のポストの方が上である。)
*「指導部が正しい」という前提がドグマ(教義)である。……改革開放が可能だったのはなぜかというと、毛沢東思想に、すでにこういう政治的プラグマティズムがあったからである。
*毛沢東は皇帝か?イエスであり、ノーである。……毛沢東が号令して、一般大衆に、政治参加を呼びかけた。これは皇帝が決してやらなかったことである。大衆の政治運動が可能になって、中国の人々全員を政治の主体として登場させたことが、毛沢東の最大の業績である。
*毛沢東という人は、伝統の拘束力から自由であった。徹底的に世俗的な利己主義にもとづく合理主義がある。……毛沢東は共産党を残したが、奥さんや子どもにとても冷たく、王朝を残さなかった。
*神と違って、天は人格がない。最後の審判もない。天命によって統治権力をある人に与えたあと、チェックがない。契約でなくて、丸投げである。……そこで、政治権力者としてふるまうというパフォーマンスをやり続けるのが自己正当化になる。
*経済が政治に従属するのは、中国の深い伝統で、二千二百年前から今まで、ずっとそうである。
*文化大革命が、いったん伝統を無化してしまい、更地のようなものを作ったおかげで、今日の改革開放も可能になった。
*天と天子をもっているというシステムというのが、中華帝国においては一番執拗に残る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/03/05

おどろきの中国②

Images13 (写真は橋爪大三郎さん)
 第一部のテーマは、「中国とはそもそも何か」である。そもそも「国家」なのか?という若干、挑発的な問いである。いくつかのポイントを抜書きしておく。
*EUがなかなかまとまらなかった理由は、交通の困難にある。アルプス山脈がある。地中海がある。移動のコストが大きい。一方、中国はその反対である。真っ平らなので、移動のコストがとても安い。なので、戦争もやりやすいし、政治的統合のコストが安い。
*中国では「政治的統一」が根本で、「政策オプション」は選択の対象である。
*ギリギリのところで問題を引き起こさなければいい、という究極の「帰結主義」によって秩序を保っている。
*儒家とは、政治権力をサポートし、統治の技術を提供する、ノウハウの塊である。儒家は決して、反政府勢力でも反体制運動でもない。
*中国の軍隊は、武器や食料を政府に依存する。軍人よりも、文民である官僚や皇帝の方が権威が高く、権力も持っている。文民統制がきちんと利いている。
*支配は血縁カリスマによってはならない。それは行政官僚制でなければならず、民衆の中からリクルートしなければならない。
*儒家と法家は明確な違いや対立を持ちながら、両者が合して、中国の支配を可能にしている。
*中国では、安全保障の優先順位がきわめて高い。
*「易姓革命」といわれるものは「農民の総意」である。「天」の意志の実態は「農民の意志」である。
*行政官僚と宦官とは反目し、憎しみ合う。
*ランキングに対する異常なこだわりは中国の特徴である。科挙の一つの本質は、戦わずにランキングを付けることにあった。
*行政官僚は、漢字の処理スピードの速さで、ほかの人より優位に立つ。そして、漢字の通用性、汎用性でも優位に立つ。恰好の支配ツールになっている。
*個人救済としての「道教」、でもそれはポリティカル・パワーになってはいけない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/03/04

おどろきの中国①

36 橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司の3人の社会学者の鼎談である。(講談社現代新書)
 3人は、2011年、橋爪大三郎さんの妻、中国人の張静華さんに導かれて、中国を旅している。橋爪さんが一番中国に関しては詳しいが、議論自体は他の2人も負けまいとしている。
 この本から、たくさん学ぶところがあって、順次紹介していくが、まずは全体を通して感じたことをざっくりと3点。
①中国は日本にとって重要な国であることは間違いない。一方、中国の中華思想からすると、日本は中国の一つの周縁国としか見られていないかもしれない。
②中国は西欧のモデル・尺度では測れない。(アジアの中では、かなり西欧化していると言われている日本だって、同じだとも言える。) だからか、この本では、できるだけ中国を虚心坦懐に見ようとしている。また、日本との比較で見ようとしている、これは面白い。
③我々は中国とどう付き合っていけばいいのか、という実践的課題をしっかりと持っているのは好感が持てる。(30年以上前だが、中国を3週間訪問した私としては同じ問題意識を持っていたい。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/31

やりなおし高校世界史②

15_2 *女性の参政権は第一次世界大戦後に認められた国が多い。これは総力戦なので、女性の労働力にかなり期待されたという理由がある。
 *ヒトラー率いるナチスは、既成政党に絶望した農民や中間層の支持を集めた。また、共産党の進出に危機感をいだく保守派や産業界の協力を得た。すなわち、国民の多くから支持を得ていたのである。

 この新書では、「国民国家」ということが1本の筋の通ったテーマになっている。
 著者の津野田さんは、国民国家とは「一つの民族が、一つの言語を持ち、一つの文化を共有して、一つの宗教のもとで、一つの法律と、一つの歴史を信じ、一つの教育を行って、一つの国民であると意識しながら、一つの国家を形成しようとしているもの」と説明している。
 フランス革命で、国民意識の高まったフランスなどがそれに近いとされるが、「国民」も「国民国家」も、あくまで近代ヨーロッパが追求した理想にすぎず、現実には少数派を含まず、均質な一つの国民で構成されているような国は存在しない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/30

やりなおし高校世界史①

14 大学入試問題から、高校の世界史を学びなおそうという、ユニークな本である。(津野田興一著、ちくま新書)
 1997年の東大入試問題。「20世紀の民族運動の展開を考える際、第一次世界大戦の前後の時期は大きな意味を持っている。この時期には…独立国家も生まれたが、未解決の問題も多く残った。それは、現代世界の民族と国家をめぐる紛争の原因ともなった。こうした旧来の帝国の解体の経過とその後の状況について、述べよ。」
 これは、現在を考える上での良問である。現代世界の民族と国家をめぐる紛争の原点が、第一次世界大戦期の戦後処理の問題にあったことが分かるのである。
 ここで言う旧来の帝国とは、清朝、ロシア帝国、オーストリア=ハンガリー二重帝国、オスマン帝国の4大帝国である。
 清朝、ロシア帝国は革命によって倒され、オーストリア=ハンガリー二重帝国、オスマン帝国は第一次世界大戦に敗北する中で解体・崩壊した。
 前二者は、主体的に体制変革を行い、帝政時代の広大な領土や異民族の多くをそのまま統治し続けた。後二者は、他律的に帝国を解体させられ、帝政時代の領土や異民族のほとんどまるごと失い、意図せざる結果として、ドイツ人とトルコ人の国民国家が出来上がった。
 その後の状況と残された問題を列挙する。
 清朝解体後、外モンゴルは独立するが、内モンゴルは残り、チベット問題に発展する。
 ロシア帝国解体後、バルト三国、ポーランドは独立するが、ウクライナ、チェチェン、中央アジア諸民族は残る。
 オーストリア=ハンガリー二重帝国解体後、ハンガリー、ユーゴスラヴィア、チェコスロヴァキアは独立するが、少数民族を抱えて、国民国家建設は困難になる。
 オスマン帝国の解体は、パレスチナ問題の淵源になる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/05/15

齋藤孝のざっくり!世界史(続き)

Imagesmp 昨日の続き。
第三章「欲望の世界史」
*「コーヒー」は、近代の持つ「目覚めている」感じと非常に相性がいい。
*コーヒーは大人の飲み物である。だから、コーヒーの味に目覚めるとは、大人になるということ。そして、大人になるとは、実は「近代人になる」ということだった。
*コーヒーのような覚醒作用の強い飲み物がヨーロッパに普及するのは、プロテスタントを中心に広がっていった。
*コーヒー栽培という過酷で地道な労働をしている貧しい人たちと、コーヒーを飲んで目覚め、経済を動かすことによって現代社会を牛耳っている豊かな人々という「格差」を生み出している。
*お茶のすごいところは、中国茶も日本茶も紅茶も、もともとは同じ「茶の木」から作られているということである。
第四章「世界史に現われたモンスターたち」
*ナチ党は(意外かもしれないが)、議会制民主主義において、議席を増やしていくことで議会を乗っ取った。
*ナチ党を支持したのは、「中間層」と言われる人々である。
*ファシズムの特徴を一言で言うと、「反対」ということである。
第五章「世界史の中心にはいつも宗教があった」
*ユダヤ・キリスト・イスラムは宗教3兄弟。この3つが説く「神」は実は同じ神である。
*宗教の時代よりも神話の時代に帰れ
*教会の支配がまだまだ磐石な12世紀頃から、ヨーロッパでは十字軍を通してアラビア文化が流入しはじめ、それによって実際には、中世ヨーロッパの各地で、ルネサンス的な動きが少しづつ芽生えていった。
*ムスリムにとってイスラム教は、精神を救うという意味での「宗教」に止まらず、共同体そのものである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/05/14

齋藤孝のざっくり!世界史

Images8j 齋藤孝さんの「ざっくり!」シリーズの「世界史」を読んでみた。(祥伝社)
 「感情」という面から歴史や現代を読み解いていく。また、歴史を突き動かす「5つのパワー」を挙げている。①モダニズム ②帝国主義 ③欲望 ④モンスター ⑤宗教 の5つである。
 これらのキーワードで世界史を見ていくのは分かりやすいし、かなり共感する。細かいところをあまり気にしない、このざっくり感がいいのだろう。
 印象に残ったところ。
第一章「西洋近代化のパワー」
*オランダ、イギリス、アメリカなどのカルヴィニズムの影響が強い国では資本主義が発達したが、イタリアやスペインなどのカトリック国や、同じプロテスタントでもルター主義の強いドイツでは資本主義が立ち遅れた。
第二章「帝国の野望史」
*現在「帝国」と言う場合、その定義の最も大きな特徴は、拡大により複数の民族を支配するということにある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)