カテゴリー「ミステリー」の28件の記事

2015/09/01

その女アレックス

500 いくつかのミステリー部門で1位を獲得したベストセラーである。ピエール・ルメートル作、橘明美訳の文春文庫である。
 第一部、第二部、第三部と三部構成になっているが、各部ごとに主人公のアレックスに対する見方が大きく変わっていく。このあたりが実に見事な構成と表現である。
 監禁や殺人など、刺激的な場面が続く。R-18指定ものである。これには私はあまり付いていけない。
 とにかくアレックスは哀れでかわいそうである。周囲の人たちがひどすぎる。どうにかならなかったのか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/09/11

教場

152 長岡弘樹著の、警察学校を舞台にした新たなミステリーであり、ベストセラーになっている。(小学館)
 確かに面白い。既視感がない、まさに新しいジャンルだ。伏線・布石がいたるところに散りばめられており、よく考えられている。これはやがて、テレビドラマか、映画になるだろう。
 だけど、警察学校って、本当に暴力・体罰容認の学校なの? さもありなん、という気もするが、ちょっと驚き!
 教官の風間は得体がしれないところがあるが、鋭い観察力と洞察力を持っている。これはなかなかもって、魅力ある人物である。
 はじめの4話は、警察学校のひとつのクラスの、ある2人の学生間の対立(恨み、妬み、復讐など)を4組(4通り)描いている。後味の悪い、暗い話が続く。
 あとの2話とエピローグは、少しほっとする話である。最後まで読み通した方がいい短編連作である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/12

64 ⑤

5 ミステリー、謎解きとしても面白い作品になっている。
 昭和64年に起きた女児誘拐殺人事件の問題点については途中で明かされるが、現時点(平成14年当時)に至るまでの謎と闇については最後の方まで、うまく引っ張っていく。そこで、14年間の重みも感じられるのである。
 最後の方に大立ち回りもあり、真相も明かされていく。このような作りからも、この作品は一級の映画作品になる要素を持っている。
 これからどうなるんだ(!?)という、未決のまま残されるものはたくさんある。
 64事件そのもののこと、事件当事者たちのこと、D県警内の刑事部と警務部との対立のこと、広報室のこと、中央の警察庁との関係のこと等々である。
 わざと描かず、残した印象も受ける。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/11

64 ④

Imagescay1zjiq 著者の横山秀夫さん(写真)は、家族の話もしっかりと描く。人間にとって、家族が重要な要素であることをよく知っているからである。
 主人公の広報官・三上義信は、娘が3カ月前に家出している。その弱みを有している。家族のことを考えると、単純に正義の味方になれない。筋を通せない。そこに大きな葛藤が生まれる。
 実は、この本のラストまでには娘のあゆみさんは家に戻ってこない。消息不明のままである。これは私にはあまりにも重いものとして心に残った。
 女性の顔のこと、娘と母親との関係、娘と父親との関係など、考えさせられることがいくつも提示されたような読後感である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/10

64 ③

4 一般の組織に通ずる話も多いが、警察特有と思われる話もある。
 まずは、刑事魂だ。主人公の三上義信はかなり追い詰められた状況にある。私だったら、とっくに投げ出しているような環境である。そこを踏みとどまっているだけでなく、謎や事件の解決のために邁進するバイタリティには感嘆する。
 現場が最も迫力があるのはどの組織でもそうかもしれないが、特に警察の現場は緊迫感がすごい。陣頭指揮は刑事課長であり、動き回るのは現場の刑事たちだ。
 一方で、警察は中央(国)の統率が強い組織だ。地方警察といっても、中央にかなりコントロールされている。そのコントロールの人的な現れが、キャリアの存在だ。お飾りのように扱われることもあるが、警察組織の特色になっている。
 日本国全体の安全を司る警察としてはやむを得ない面もあるが、この中央による地方警察のコントロールといった問題は軋轢も生む。この警察小説の主要なテーマになっている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/09

64 ②

Imagescab773ml 警察は巨大な官僚組織である。警察以外の大きな組織にも通ずる話がたくさん描かれている。
 だから、現在、組織に属している人間には共感するものが多い。著者の横山秀夫さん(写真)の表現のうまさにもよる。
 組織が個人を押し潰したり、追い込んだりする。上の人は分かってくれない。下の者は葛藤に苛まれる。組織の中で蠢いている。このようなことはどのような組織にも何かしらあるだろう。
 主人公の三上義信は46歳の広報官である。会社でいえば、課長補佐くらいの地位であろう。組織の中で、最も葛藤の多い場所に置かれていると言える。
 この本では、「情報」の問題がかなり出ている。
 内部対立から、情報の共有化が十分になされていない。これでは簡単な意思決定もできない。
 それから、外部に対して、情報を隠している。これでは、国民のため、市民のため、という警察組織の存在意義さえ疑われる。被害者の気持ちに沿っていないから、全然説得力がない。
 我々の職場でも同様なことが起きているのではないかと、反省の材料になる。現実はもっともっと複雑だともいえるが、共感することは多い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013/01/08

64 ①

Imagesca7le9cw 今期ナンバー1のミステリーと言われている、横山秀夫さんの警察小説である。(文藝春秋)
 実際、引き込まれる傑作である。
 昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、県警の刑事部と警務部が全面戦争に突入する。その狭間に落ちたのが主人公の広報官・三上義信である。一方、彼の娘は家出をし、行方が分からない状態でいる。
 三上の置かれた設定がうまい。刑事部の中で刑事として活躍してきた男が、警務部の中の広報官に任ぜられる。これでは心の葛藤が生まれないわけにはいかない。しかも、広報官という立場は警察の外部、特にマスコミ対応が一番求められるポストである。こちらも軋轢やトラブルが頻繁に起きる。すなわちドラマが生じやすい設定なのである。
 大規模な官僚組織である警察というものがよく分かっている、警察とマスコミとの葛藤や妥協などもよく分かっている、だから、このあたりをきめ細かくリアルに表現できる。12年間、地方新聞である上毛新聞の記者として働いていた横山さんの強みである。
 警察と外部との葛藤、警察内部の葛藤、そして何よりもその組織内にいる人間の葛藤を実によく描いている。だから、心理描写に厚みがあり、展開が重層的である。
 警察庁長官の視察までの1週間を濃密に描いている。その中で山が何度もやってくる。この集中的なドラマ表現は、かつての作品「クライマーズ・ハイ」で横山さんが見せたところである。
 まさに、この作品は映画かドラマのヒット作の原作になりそうな作品である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/03/23

ビブリア古書堂の事件手帖

Images36 三上延作「ビブリア古書堂の事件手帖」~栞子さんと奇妙な客人たち~(メディアワークス文庫)である。
 鎌倉の片隅でひっそりと営んでいる古書店「ビブリア古書堂」。そこの店主、栞子さんが本にまつわる出来事に名探偵振りを存分に発揮する。彼女は本以外のことに関しては、極度な人見知りである。
 第1巻で紹介されている古書は、夏目漱石「それから」、小山清「落穂拾い・聖アンデルセン」、ヴィノグラートフ・クジミン「論理学入門」、太宰治「晩年」である。
 それぞれの古書にまつわる事件が独立しているように展開される。それら4つの話が最後にうまく繋がった。登場人物、エピソードが最後の方でぎゅっと凝縮されて結びついた。見事である!
 だから、読後感がいい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/07/23

新宿鮫Ⅹ 絆回廊

Images50 大沢在昌著の「新宿鮫」第10作目、「絆回廊」である。
 鮫島は新宿署の敏腕刑事である。キャリアだが、現場の刑事として事件に立ち向かう。その仕事ぶりから、組織からは嫌われ、浮いており、出世は望めない。悪を憎み、危険な目に合いながらも警察官として自分なりに仕事を進め、信念を持って生きている。
 今回の物語は、親子、恩人、上司、同胞などの人間関係(絆)が複雑に絡み合い、人間模様をなしている。そして、組織内のアウトロー的存在の鮫島を支えてくれてきた上司に危機が迫る……。熱気と疾走感が伝わってくる好きな作品である。
 私が「新宿鮫」シリーズが好きなもう一つの理由は、舞台が新宿であり、歌舞伎町の場面が多いことである。歌舞伎町の雰囲気(猥雑さ、恐さなど)がリアルに伝わってくる。

 「新宿鮫」ファンとしての自虐ネタを一つ。
 新宿歌舞伎町を拠点として、灰色の背広を着て、チョロチョロと仕事に駆けずり回っている俺。俺のことを人は「新宿鼠(ネズミ)」と呼んでいる……。(カッコワルイ!!)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/04/21

謎解きはディナーのあとで

Images1v 東川篤哉さんのユーモア・ミステリーだ。今年の本屋大賞に決まったベストセラーである。
 国立署の刑事、宝生麗子は大富豪のお嬢様だが、出自を隠している。上司でジャガーを乗り回すお金持ちの風祭警部に振り回されている。麗子が事件のことを相談するのは執事の影山、彼は毒舌ながら難事件を見事に解決する。
 惜しみなくトリックやアイデアを披露しているストーリーだが、そこだけに主眼があるわけではない。
 上の登場人物3人の絡みや会話が楽しい。
 全6話の中で、私は全体の中で異質な話である、第四話「花嫁は密室の中でございます」が一番面白かった。これは麗子と執事の影山が大いに絡む話である。影山が謎解きのみに活躍する他の話より、話全体に躍動感がある。
 与えられたストーリーから犯人探しもできるという本格推理もののようでもあるが、それほど緻密な構成でもない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧