カテゴリー「文学」の268件の記事

2017/12/12

マイケル・K

836 J.M.クッツェー作、くぼたのぞみ訳、岩波文庫である。
 世界文学としての傑作である。クッツェーはノーベル文学賞受賞者である。
 主人公マイケル・Kは自らのモラルに従っている。
 自分が生きること、その生き方を自ら選んでいる。それは自由だ。
 庭師として、大地に生きている。大地に生かされ、大地に死のうとしている。

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2017/11/08

服従

828 ミシェル・ウェルベックの、2022年の仏大統領選挙をめぐる近未来小説である。(河出文庫)
ベストセラーになった。私は、全体的に興味深かった。
 特に後半の主人公フランソワがイスラム教に改宗するか、それとも国外脱出を図るかという、宗教的・精神的な緊張感のところは読みごたえがあった。
 これは、イスラム教対キリスト教、宗教対インテリ、服従対自由などの対立であり、ヨーロッパでは前者が勝ちそうな情勢にあるということを示唆している。これはそう単純でないことは当然だが、そうなりそうな不安感がヨーロッパにはありそうだということである。
 フランソワはそれなりに葛藤するが、最後は性や家庭、一夫多妻制などの魅力にころっと負けてしまった形になっている。このあっさり感、デレっとした感覚は妙にリアルであり、ちょっとゾッとする。女性軽視の思想がフランソワには最初から通底していたことにも気づく。
 19世紀末のデカダンス作家の代表・ユイスマンスとの対比は見事である。ユイスマンスは良き時代の個人的な改宗だったのかもしれないが。

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2017/10/17

ナミヤ雑貨店の奇蹟

825 東野圭吾のベストセラーになった小説の方を読んだ。(角川文庫)
 映画を観た後にこの小説を読んだわけだが、なかなかによかった。
 単に時系列の話ではない。時間・時代が錯綜している。伏線を張り巡らせてあり、それらが最後の方で繋がっていく。さすがにうまい作りである。
 丸光園という児童養護施設とナミヤ雑貨店の店主・浪矢雄治とはやはり縁があった……。それが奇蹟の源になっている。

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2017/10/09

リヴァイアサン

820 『リヴァイアサン』ポール・オースター著 柴田元幸訳 新潮文庫 である。
 自由というものを考えるきっかけにする。
 偶然が多い。それが人生というものかもしれないが…。


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2017/09/12

三月の5日間

813 「わたしたちに許された特別な時間の終わり」に所収されている作品である。(岡田利規著、新潮文庫)
 私にとっては既視感を覚えた作品である。そのあたりが私には面白い作品だった。
 一つは、私もある程度知っている渋谷の街が作品の舞台だということ。
 二つ目は、西麻布のスーパーデラックスでのパフォーマンスが哲学カフェを思い起こさせてくれたこと。
 三つ目は、渋谷のラブホテルでの4泊5日のことが、私自身が経験した4泊5日のエンカウンター・グループ合宿を思い出させてくれたこと。

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2017/08/07

今夜、すべてのバーで

808 アルコールにとりつかれた主人公・小島容(作者・中島らもの相似形)は面白い人物だと思うが、私としてはあまり付き合いたくない人種である。(講談社文庫)
 改めて思うに、アルコールなどに強く依存するって、人間の性(さが)、特に人間の弱いところを見せられて、とても悲しい気持ちになる。

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2017/07/24

騎士団長殺し

806 村上春樹の新作、第1部 顕れるイデア編、第2部 遷ろうメタファー編 をやっと読み終えた。(新潮社)
 イデアとメタファー、謎が謎を呼ぶ。そこが面白いのだが、終わらない、片付かない。村上春樹だから許されるところって、ありそうだ。うまいんだよね。
 『ねじまき鳥クロニクル』に繋がるものは感じる。

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2017/07/18

白痴

805 坂口安吾の1946年(昭和21年)に書かれたということで、とても意義のある作品である。(新潮文庫)
 その少し前に書かれた『堕落論』と併せて読む作品とも言える。
 国家によって作られた理想・理念など、虚しい美しさである。人間の本能・本性にまで堕落せよ、生きよ。そこから自らの理想・理念が生まれてくる。
 これは今にも通ずる。だから私は共感する。

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2017/05/30

あなたの人生の物語

795 映画「メッセージ」の原作である。作者テッド・チャンはすごいSFを書く。
 原作は物理理論が、例えば「変分理論」が巧みに使われる。目的論的な世界観が描かれる。そこには未来が当然のように存在する。
 女性主人公ルイーズと娘の話が前面に出てくる。だから、本の方はここに大きな感動が生まれる。
 映画の方は、エイリアンであるヘプタポッドとルイーズとの関係がかなり描かれる。これはこれで私は面白いと思った。

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2017/05/16

ボラード病

789 吉村萬壱さんの東日本大震災を背景にした作品である。(文春文庫)
 ディストピア小説ということになるのだが、私はこの種の小説は気が滅入るので好きではない。だからどうしても読み飛ばしてしまい、読みが浅くなる。
 「同調圧力」の強い社会が作られている。これは裏や上の方にものすごい悪い奴らがいて、彼らが操作している、そんな単純な構造はもはや想定できない。社会がそうなっているとしかいいようがないところがある。
 そのような社会にどう対したらいいのか?
 「逃げるは恥だが役に立つ」…私はそう提唱したくなった。「逃げる」は時には一つのいい選択だ。
 出たり入ったりは自由がいい。発言する、しないは自由がいい。これは哲学カフェの一般的なルールでもある。

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