カテゴリー「文学」の263件の記事

2017/08/07

今夜、すべてのバーで

808 アルコールにとりつかれた主人公・小島容(作者・中島らもの相似形)は面白い人物だと思うが、私としてはあまり付き合いたくない人種である。(講談社文庫)
 改めて思うに、アルコールなどに強く依存するって、人間の性(さが)、特に人間の弱いところを見せられて、とても悲しい気持ちになる。

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2017/07/24

騎士団長殺し

806 村上春樹の新作、第1部 顕れるイデア編、第2部 遷ろうメタファー編 をやっと読み終えた。(新潮社)
 イデアとメタファー、謎が謎を呼ぶ。そこが面白いのだが、終わらない、片付かない。村上春樹だから許されるところって、ありそうだ。うまいんだよね。
 『ねじまき鳥クロニクル』に繋がるものは感じる。

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2017/07/18

白痴

805 坂口安吾の1946年(昭和21年)に書かれたということで、とても意義のある作品である。(新潮文庫)
 その少し前に書かれた『堕落論』と併せて読む作品とも言える。
 国家によって作られた理想・理念など、虚しい美しさである。人間の本能・本性にまで堕落せよ、生きよ。そこから自らの理想・理念が生まれてくる。
 これは今にも通ずる。だから私は共感する。

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2017/05/30

あなたの人生の物語

795 映画「メッセージ」の原作である。作者テッド・チャンはすごいSFを書く。
 原作は物理理論が、例えば「変分理論」が巧みに使われる。目的論的な世界観が描かれる。そこには未来が当然のように存在する。
 女性主人公ルイーズと娘の話が前面に出てくる。だから、本の方はここに大きな感動が生まれる。
 映画の方は、エイリアンであるヘプタポッドとルイーズとの関係がかなり描かれる。これはこれで私は面白いと思った。

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2017/05/16

ボラード病

789 吉村萬壱さんの東日本大震災を背景にした作品である。(文春文庫)
 ディストピア小説ということになるのだが、私はこの種の小説は気が滅入るので好きではない。だからどうしても読み飛ばしてしまい、読みが浅くなる。
 「同調圧力」の強い社会が作られている。これは裏や上の方にものすごい悪い奴らがいて、彼らが操作している、そんな単純な構造はもはや想定できない。社会がそうなっているとしかいいようがないところがある。
 そのような社会にどう対したらいいのか?
 「逃げるは恥だが役に立つ」…私はそう提唱したくなった。「逃げる」は時には一つのいい選択だ。
 出たり入ったりは自由がいい。発言する、しないは自由がいい。これは哲学カフェの一般的なルールでもある。

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2017/04/13

想像ラジオ

779 いとうせいこうのベストセラー小説である。(河出文庫)
 東日本大震災後の比較的早い時期に、震災に関わる死者と生者の物語を紡いだ意義は大きい。
 死者の声を想像することによってラジオから聴くという設定もいい。生者の側の話も織り交ぜての章立てもよくできている。
 まさに喪失による悲しみを描いた小説である。
 仏教的世界観が色濃く反映されている。

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2017/03/14

春琴抄

765 名作であることを大いに認める。谷崎潤一郎はすごい!
 現代からの私の少々特異な評価を書く。
 現代では、自立していること、そして自立したもの同士が関係を持つことをよしとする傾向がある。しかし、お互いに依存し合っていて、二人が揃ってこそ自立しているという関係があってもいいではないか。それをこの小説は示している。
 また、現代は見た目を重視し過ぎている。視覚が9割以上の社会である。これへのアンチにこの小説はなっている。目には見えないもの、あるいは「音」というものにこれだけの美しさを見出している。

 とにかく、愛の追求の形にしろ、美の追求の形にしろ、『春琴抄』の世界は現代の我々に、忘れているものを鋭く蘇らせる力を持っている。

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2017/02/14

美徳のよろめき

759 今(現代)の私からすると、理解不能なあほらしい人種の話である。旧貴族の有閑マダムの不倫の話である。
 まさに、よろめいたのだけれど、また元へもどった。
 主人公節子は現実を否認し、自己完結的な美と道徳(まさに美徳)の世界に住んでいる。それは三島由紀夫の独自の世界観でもある。

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2017/01/19

雪国

749 あの川端康成の、あの『雪国』である。(新潮文庫)
 今回20年ぶりくらいに再読して、私はえらく感動した。どこに感動したかを細かいところは省略して、要点を述べる。
 人間関係の上下、優劣とか、対等といった尺度ではない。波長が合う、仲がいいといった関係のことでもない。
 「美」と「悲しさ」に直截的に魅かれるのである。静かで、強い力で。それが日本的な愛や情の世界のような気がする。
 このことを20年前は分からなかった。少し間をおいて、また読んでみたくなる名作である。

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2016/11/03

モナドの領域

722 筒井康隆著、新潮社発行である。
 「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長編」と謳っているが、あまりそのように感じられない。
 GODの登場と語りが最大の内容だと思う。本文を読んだだけだと、ピンと来なかったが、先に読んだ『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』(青山拓央著、太田出版)で、GODの存在についてうまく説明してくれている。

*GODは同作における「現実」世界を、他の諸可能世界とともに一挙に創った。
*すべての諸可能世界は在るように在り、そこには時間推移がなく、変化もなく、消失もない。
*そもそも存在すること自体が~1+1=2の真理性と同様の~目的なき真理性をもつ。(そういえば『モナドの領域』の最終章は「神の数学」であった。)
*諸世界における存在はどれも、それ自体としての真善美を併せ持ち、ある存在を他の諸可能性と比して「祝福」することはまったく意味をなさない。

*GODは作者・筒井康隆氏とともに『モナドの領域』でただ「遊戯」している。

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