カテゴリー「文学」の292件の記事

2020/10/07

明暗

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漱石はやはりすごい!(再読してそう思う)

それまでの作品とは異なる。

人物造形、心理描写が半端ない。そのポリフォニーが素晴らしい。完成していたら世界文学になっていたのではないか。

女性の描写が苦手ではないかと言われていた漱石がこの作品では多彩な女性を登場させている。

主要人物である、お延、吉川夫人、お秀はもちろんキャラが立っているが、それだけでなく、おばさんたち(朝、住)や住の娘である継子、そして主要女性3人に対比するように置かれる、純で、鷹揚な清子に至るまで、それぞれの人物が目の前にいるように描かれる。特に、お延が私には現代的な女性に通ずるようにも受け止められた。

小林のような鬱屈した人物を作り出したのもお見事!(そうか!……ドストエフスキーに繋がるものを感じた。)

結婚、夫婦というものが描かれる。津田由雄とお延の関係は今に通ずるものだ。そこには夫婦間のだまし合い、嘘をかさねていくということも含んだ緊張関係が存在している。

また、近代においては「金」の問題は外せない。この金については漱石はかなり意識しており、この小説でもストーリー展開上、重要な役割を果たしている。

会話・対話というものが重視され、それによって心がダイナミックに動いていく。この心の揺れや変化を漱石は超一流の腕で丹念に描いていく。

焦らしを入れたり、ねちっこく細かく描いたり、それでいてあくまでも写実的に表現していく、まさに漱石らしいなぁ。(このあたりで、好みも分かれるのだろう。)

未完に終わったこの作品。漱石の頭の中にはそれなりの構想があったと思われる。残念ではあるが……。

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2020/09/02

むかしも今も

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山本周五郎は「愚直さ」を尊ぶ。

見た目だけではない、口先だけではないものである。

実際的で、具体的な行為のある愛である。これこそ、「本当のもの」である。

女性には、女性特有のきめ細かさがある。そこを周五郎は優しく描いていて素晴らしい。

災害、病気、貧困などで、早く亡くなっていく人たちがいることも描いている。

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2020/08/31

柳橋物語

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久しぶりに小説で泣いた。

本当の愛が分かった時、その相手は既に亡くなっている。

(それまでは愛を誤って捉えていた。)

これには感涙せざるをえなかった。

真実の愛には、実際的で具体的な行いが伴うものだ。

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2020/07/27

わたしを離さないで

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読みづらい面はあったのだが、とてもすごい小説に出会えた。

カズオ・イシグロの代表作だ。(早川書房)

こんなことってあってはならないし、ありえないことだと思う。

しかし、イシグロは現に起きているものとして、現在形で書いている。

この状況下でどう感じ、考え、行動するか?

若者3人のナイーブな心理を描いている。そこには魂が存在している。

イシグロ自身が経験したことではないかと思わせるきめ細かな情景描写に驚嘆する。

著者の視線が感じられる。

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2020/07/05

最後だとわかっていたなら

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『最後だと分かっていたなら』(サンクチュアリ出版)を読み、とても感動した。

作者のノーマ コ―ネット マレックさんは当時10歳になる息子さんを亡くして、この詩を1989年に発表した。

2001年9.11同時多発テロ後に、チェーンメールで世界中に広まった。

訳者の佐川睦さんはお姉さんを若くして亡くされた経験を持っている。

悲しみと愛の心が伝わって、作られた本だということが分かって、胸が熱くなった。

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2020/07/03

アーモンド

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ソン・ウォンピョン作、矢島暁子訳(祥伝社)、2020年本屋大賞・翻訳小説部門第1位の作品である。

扁桃体(アーモンド)が人より小さく、「感情」がわからないユンジェ。目の前で祖母と母が通り魔に襲われたときも、ただ黙って見つめているだけだった。だが、ある出会いが彼の人生を変えていくーー。

*例えば、こうやって君と私が向かい合って座って、しゃべってるみたいなこと。一緒に何か食べたり、考えを共有すること。金のやり取りなしにお互いのために時間を使うこと。そういうのを親しいって言うんだ。

*私があんたに近づいたから、心臓が嬉しくて拍手してるんだよ。

*ほとんどの人が、感じても行動せず、共感すると言いながら簡単に忘れた。

*それに私は今でも、心が頭を支配できると信じているんだ。

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2020/06/30

横道世之介

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原作は吉田修一である。

横道世之介はフツーの人であり、のん気、お人よし、純朴、おっちょこちょいでもある、愛しい存在である。

積極的に人のために行動するというのではない。しかし、人を傷つけようとはしない、貶めようとはしない。思わず人に手を差し伸べてしまう優しさを持っている人物である。

目立たないが、存在しているだけで、ほっこりさせてしまう人。私の青春時代にも、そういう人はいたような気がする。

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2020/06/14

モモ

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『モモ』は私の大好きな物語であり、名作である。

「時間」が主題であり、対比されているのは「お金」である。

モモは人の話をいくらでも聞ける子どもだが、モモ自身は譲ることができない芯を持っている子どもでもある。

映画は少々チープな作りになっているのが残念だ。

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2020/02/23

おばあちゃんのはこぶね

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これも女性の一生を描いた作品とも言える。

お父さんが作ってくれた「はこぶね」が一人の女性の傍らに常に寄り添っている。

しみじみとした味わいのある絵本である。

『雪のひとひら』も併せて読んでみると、女性にとっての男性というものを考えさせられる。

それは父であり、夫であり、そして神でもある。(神は旧約聖書では特に男性のイメージである。)

こんな風に感じるのは、私が男性だから?

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2020/02/22

雪のひとひら

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女性の一生を雪のひとひらの誕生から死までとして表現したファンタジーである。

そこには悲しいことも辛いこともたくさんある。

そこに貫いているのは「愛」であり、多彩な愛が描かれる。

自然に対する愛、人間に対する愛、神の愛……。

夫への愛、子どもたちへの愛……。

無償の愛、まさに自己犠牲的な愛……。

これらは男性でも同じである。

私も、愛のもとに、一緒に笑ったり、泣いたりしたいんだなぁと思った。

自らの誕生の神秘(不思議さ)についても思い返し、考えたくなる作品である。

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