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2020/10/07

明暗

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漱石はやはりすごい!(再読してそう思う)

それまでの作品とは異なる。

人物造形、心理描写が半端ない。そのポリフォニーが素晴らしい。完成していたら世界文学になっていたのではないか。

女性の描写が苦手ではないかと言われていた漱石がこの作品では多彩な女性を登場させている。

主要人物である、お延、吉川夫人、お秀はもちろんキャラが立っているが、それだけでなく、おばさんたち(朝、住)や住の娘である継子、そして主要女性3人に対比するように置かれる、純で、鷹揚な清子に至るまで、それぞれの人物が目の前にいるように描かれる。特に、お延が私には現代的な女性に通ずるようにも受け止められた。

小林のような鬱屈した人物を作り出したのもお見事!(そうか!……ドストエフスキーに繋がるものを感じた。)

結婚、夫婦というものが描かれる。津田由雄とお延の関係は今に通ずるものだ。そこには夫婦間のだまし合い、嘘をかさねていくということも含んだ緊張関係が存在している。

また、近代においては「金」の問題は外せない。この金については漱石はかなり意識しており、この小説でもストーリー展開上、重要な役割を果たしている。

会話・対話というものが重視され、それによって心がダイナミックに動いていく。この心の揺れや変化を漱石は超一流の腕で丹念に描いていく。

焦らしを入れたり、ねちっこく細かく描いたり、それでいてあくまでも写実的に表現していく、まさに漱石らしいなぁ。(このあたりで、好みも分かれるのだろう。)

未完に終わったこの作品。漱石の頭の中にはそれなりの構想があったと思われる。残念ではあるが……。

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