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2019/03/12

そして父になる

4  「この映画を見て、福山雅治が少し好きになった」と言った人がいる。これは、もちろん福山雅治が演じた野々宮良多を好きになったと解釈してもいい。私も、映画を見ただけではあまり感じなかったが、今回の対話の結果、野々宮良多が好きになった。
 良多が育った家庭は決して順風満帆で穏やかだったわけではない。良多の父親は多分仕事に失敗し、良多を産んだ母親とは離婚し、後妻を迎えている。その後妻に良多は育てられた。良多は父親に対して、激しい葛藤を持つとともに、その義母に対してもわだかまりを強く持っていた。
 その良多は自らの努力で、一流企業に入社し、エリートコースを歩んでいた。まさに刻苦勉励して、自らの力で獲得してきたという自覚を持っているであろう。そのような経歴を持つ良多にとっては、息子の慶多を自分のように育てることが、自らの父親モデルになっていたのもうなずける。
 その良多が息子の取り違い事件に巻き込まれ、斎木家(リリー・フランキーが父親を演ずる家)との交流を通して、変化していく。それは今までの父親像を180度転換するような、自らの生き方までも変える、苦しい変化である。
 そして、最後には、未来へ向けて、挑戦しようとしている。それは、このようなケースでは、ほぼ100%子どもを血縁関係の方に戻すという一般的な決着に対する挑戦である。血の論理より、情を重視するという選択である。さらに、自分とは異質な斎木家と、今後密接な協力関係を築いていくことを選んだ。
 良多と両家の家族がこれから歩む道は険しいかもしれない。どうなるかは予測できない。しかし、変化し、挑戦しようとすることは勇気のいることであり、素晴らしいことだと思った。
 哲学対話においては、自分の考えが変わるのを楽しむということを推奨する。この映画はこのことに通ずるものを感じた。そして、改めて、変わるというのは勇気のいることであり、うまく変われば、そこに新たな地平が生まれるということを思った。

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