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2010/08/05

俺俺

Imagescae329mh 「俺俺」(星野智幸著、新潮社)は朝日新聞評では傑作だと書かれていたが、私にはあまり好きになれなかった。
 他者によって規定され、成立する「俺」、他者がいなければ自分も存在しない、それが現実だろう。
 しかし、俺だけで自己完結したい欲望は強い。特に、自己中心的な自分主義者なら、なおさらである。
 すると、自己がどんどん拡大、拡散していく。俺の増殖が始まる。この自己の増殖を描いたのがこの物語である。自他の区別がなくなり、全部が自分、他者が消えていく。
 それは多くの俺が、クローン人間のごとく、ゾンビのごとく存在する世界である。取替え可能な俺が多数存在する世界である。
 そこまで極大化すると、俺自体も一枚岩でないことが見えてくるのは面白い。俺の弱さや醜さも分散、拡大化され、多方面で展開するようになる。俺が何者かも分からなくなってくる……。

 この俺の増殖の感覚は私にはない。もし、30代くらいの年代にある感覚だとしたら(?)、ちょっと恐い。
 彼女に当たる女性が登場しない。家族も空々しい。寂しい話である。
 最後は尻切れのような小説である。哲学的テーマのように見えるが、中途半端な感じも受ける。

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