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2010/02/15

猫を抱いて象と泳ぐ

7andy_32187111 小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」はユニークで密度の高い作品である。
 小さな世界で、小さな一生だったかもしれないが、リトル・アリョーヒンはこの作品で永遠になった。
 ユニークな設定である。小さな身体でチェス台の下に潜り込み、人形を使ってチェスを行うリトル・アリョーヒン。彼自身はチェスの相手には見えない。相手は人形とチェスを行う。
 話はチェスを教えてくれたマスターと過ごした時期、ホテルの地下にある海底チェス倶楽部の時期、チェス連盟のメンバーの老人専用マンション・エチュードの時期と3つの時期を描く。それぞれに濃密な味わい深いストーリーが展開する。それぞれに山があり、面白いのだが、簡単には説明できないくらい様々なエピソードが連なるのが小川洋子ワールドだ。
 全体的には悲しい話である。大人の身体にならないということからして、異様であり、それが悲しさも生む。しかしながら、リトル・アリョーヒンは素晴らしく豊かな世界を持っていた。それはチェスの世界なのだが、まさにうらやましく思える世界である。リトル・アリョーヒンは幸せだったはずである。
 おとぎ話的であり、辻褄が合わない感じのところもあるが、たくさんの心温まるエピソードが多彩である。3つのそれぞれの時期が厚みのある物語であり、読後感はお腹いっぱいといったところである。
 チェスを知らなくても、大いにその世界を楽しめる作品である。

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