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2009/10/18

自己を見つめる

7andy_30948495 昨年亡くなられた渡邊二郎先生の放送大学のテキストである。
 名著である。哲学というより人生論的なところが我々に大いなる示唆を与えてくれる。
 自分の人生は自分で決める、この「自己決定論」が強く印象に残る。決定できる存在として、自己は世界において特別な存在であり、特別な関係である。
 それは自分が他人と比べて特別に優れているとか、特別に偉いとかいうのではない。能力とか体力とか性格とかいったレベルの話ではない、これらは単なる与条件である。この与条件の中で自己決定していくのである。
 その自己決定においては、運命の非情な必然といった受動的な面と人間の誇り高い自由といった能動的な面が交差している。
 もう一つ印象に残ったテーマは「老い」である。
 能力、体力は落ちてくる。地位、名誉、金などの増大を将来に期待できない。しかしながら、この精神の高みや豊かさの実感は何なのだ。
 子どもの頃から老いに至るまでの持続的な自己がある。超越論的な眼差しを持った、自己同一性のある自己である。この自己が人生の本質と限界を見ることを可能にする。
 ところで、この本では次のニーチェの言葉が再三引用される。「これが、生きるということだったのか。よし、それならば、もう一度。」 勇気を与えてくれる言葉である。
 70歳だった著者だから書けた文章のような気がする。文章に味があるし、深みがある。しかし、学者らしい、ねちっこさと「努力と精進」といった言い回しの古さも感じる。

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